世界平和ゲーム。未来を担うこどもたちから私たちが学ぶ時代が来ている

あなたは「世界平和ゲーム」というものを知っているだろうか?これはアメリカの教師、ジョン・ハンター氏が1978年に考案し、自身の教育過程に取り入れているものなのだが、それが近年ますます大きな注目を集めるようになりつつあるのだという。

まずこのゲームの骨子についてまとめられた文章を引用してみる。

このゲームには、4層に重ねられたアクリル板が使われる。

最下層は海面下、2層目は海面と地上で、工場や都市、戦車などがあり、その層で国が4つに分かれる。3層目は大気圏で領空などが表され、最上層は宇宙空間であり、資源採掘用の宇宙船などが配されている。

各国の首相は、生徒たちが務める。これは生徒の成長等を見きわめながら、教師が指名していくのだが、それが結構“賭け”に出ているのが見どころだ。

ある時はいじめっ子が首相になったり、ある時は、優秀な頭脳を持ちながらも、動きが鈍く、なかなか自分の意見が言えない子が首相になったりする。

一応、ハンター氏はその子の力や長所を見込んで首相に任命するのだが、しばしば「これはさすがに失敗だったか」とヤキモキする。

そしてその不安は的中し、ある者は独裁者となって国が危機に瀕する事態に陥り、またある国は首相が口ごもってしまい、何も進まず大臣たち(もちろん生徒)がいら立つこともある。

しかしハンター氏は、ひたすら待つ。待ちくたびれるほど待つ。

すると子どもたちは、ハンター氏の期待以上の行動に出て、自らの力で難局を乗り越えていくのだ。

こう書くと、結構簡単に乗り越えているように聞こえるかもしれないが、そこに至るまでの子どもたちの葛藤やぶつかり合いは相当なものである。

そもそもハンター氏は、そんなに簡単に世界平和が実現するようには作っていない。

誰にでも公平に不測の事態を引き起こす、「気象の女神」(ハンター氏によると、「神」でも良いのだが、なぜかこの役割はいつも女子が担うことになるという)により、突然天候が荒れて漁場がつぶれそうになったり、株式市場が変動したり・・・。

また、しばしば問題児が任命される「破壊工作員」により、自国を壊滅させる政策が秘密裏に行われるなど、細工は流々だ。
その役割を的確かつユニークにこなす生徒たちの想像力には脱帽するが、実際にこのような危機は、いつでも起こり得る。

たしかにゲームの設定自体は架空かも知れないが、そこで起こるトラブルは、どこまでも現実的なのが、このゲームのポイントだ。

ちょっと前に流行った本、今話題の本、個人的にアンテナに引っかかった本の感想を書いていきます。

このように、このゲームでは、それぞれ異なった資産、産業、軍を持つ国家が、他国との交渉などを重ねながら、民族間や少数派での確執、 化学物質や核物質の漏洩、核拡散、油田流出、水争い、飢饉、地球の環境変化といった50もの問題を解決し、そのうえでそれぞれの国の資産価値を、 ゲーム開始時より高めた状態にすることが目的とされる。これが達成されたとき、「平和」が実現し、ゲームは終了するのである。

しかし、私たちの現実生活を見れば明らかなように、こういった諸問題の解決は途方もなく難しいように思える。だからこそ、私たちはまだ「世界平和」を実現できずにいる。だが、たとえ擬似的な「ゲーム」のなかとはいえ、こどもたちはそれを実現して見せてくれるのである。

このゲームに取り組むにあたり、こどもたちは「孫子の兵法」なども含めた様々な学習を行い、それぞれの役割を果たしながら平和の実現を目指していくのだという。これがこどもたちに与える影響はとても大きなものだろうし、もちろん「教育効果」も高いだろう。だが、それと同じくらいそこに関わる「教師」や私たち「大人」のほうも、こどもたちから多くを学ぶことができるのだと思う。

最後に、このゲームの考案者であるジョン・ハンター氏の実際のプレゼンテーションを紹介しておきたい。ここで彼も言っているように、私もどうすればこの世界の問題が解決できるのか、明確な「答え」を持ってはいない。ただ、私もこの世界に生きてきた以上、今の世界の有り様は、私が望んでいるものではないにしろ、私と無関係に出来上がったものではないということは確かだ。つまり、この世界をこのようにしているのは、やはり私たちなのである。そして、このままではこの世界の平穏は保たれないばかりでなく、ますます混乱していく可能性のほうが高い。だから、決して今の私たちに余裕があるとは言い難いのだが、かと言って完全に手遅れでもないはずだ。その可能性を私もこのこどもたち、そしてあなたとともに、これからも探していきたいと思う。そしてその希望は、まだ確かに、残されているのである。