絶喰の盟約。お前の苦しみの真の原因について

久しぶりに、仲間たちからの言葉を共有してみようと思う。だが彼は、単純な私の「仲間」というには、かなり語弊がある。誰より彼自身が、私の「仲間」と括られることに、抵抗を感じるだろうとも思う。だが私と彼の付き合いは、とても古くからのものであり、私と彼が

「旧知の間柄」

であることだけは、彼にも異存はないと思う。

とはいえ、私と彼の考えかたには、とても大きな違いがある。だから彼を、単純に私の「同志」であるということも難しい。だがそれでも、私とは違う観点で世界を捉え、私とは違う行動を世界に提示しようとしている彼が、私とは違う意味で、あなたの力にもなれる可能性は、充分にあると思う。そしてなにより、今回とても珍しいことに、彼がこうしてあなたになにかを伝えることに乗り気なようなので、この機会にあなたにも、彼の想いを聴いてもらいたいと思う。私が言えたものでもないが、彼の「クセ」を受け入れることができたら、きっとあなたにも、なにかを感じてもらえるのではないかと、そう思っている。

 

よぉ、今日も相変わらず絶望にまみれた世界だな。

そこで相変わらず、お前も絶望してるんだろ?違うのか?俺はそうだ。

けど俺とお前に大きな違いがあるとすれば、お前が絶望のなかで苦しんでいるのに対して、俺は絶望のなかで安定しているってことだ。じゃあなんで、そんな違いが生まれると思う?それは、お前の絶望が、中途半端だからだ。間違ってるとも言ってもいい。だから少し、俺の話を聴いてみろ。もちろん、聴かなくてもいいけどな。俺は最初から期待なんかしてない。ただあいにく今日の俺は、少し気分がいいんでね。

まずお前の絶望が中途半端な原因は、

どこかに天国がある

と思ってることだ。

けど、そんなものはない。死後の世界はあるさ。でもそんなものは、別にたいしたことじゃない。地獄とか天国とか、そんな色分けもたいした意味はないんだ。あるのはただ、

「お前に最もお似合いの世界」

だ。それにほんとは、

「死後の世界」

なんてものはない。俺たちは、ずっと生き通しだ。俺はどこに行こうが俺だし、お前は何度生まれ変わろうがお前だ。服を替えたって中身は変わらないし、服を着替えたからって死ぬわけじゃない。俺は俺で、お前はお前だ。だから、天国なんてものはない。もっと適切な言葉で言えば、

「お前に都合のいい世界」

なんてのは、どこにもない。世界はひとつじゃねぇけど、ほんとはぜんぶでひとつなんだ。

だからよく

霊界のほうが安らかで過ごしやすいなら、なんでわざわざこんな世界に生まれ変わってくるのでしょう?

なんて言うヤツがいるけどさ、俺から見りゃあ笑っちゃうね。

魂の成長のため?いろんな経験を積むため?かわいそうな誰かを、世界を救うため?

それだって、確かにあるかもしれねぇとは思うよ。だけどそんな「立派な理由」で、自分のしあわせを無下にできると思うか?俺は、そんなんじゃない。そしてほんとは、お前だってそうだと、俺は思ってる。

俺たちがわざわざこの世界に生まれ変わる理由は、

「向こうにいたくなくなったから」

だ。そしてなんで向こうにいられなくなったかって言ったら、

「しあわせじゃないから」

だ。しあわせなら、ずっといたらいいんだ。なのにいたくなくなるのは、しあわせじゃないからだ。これ以上単純で、腑に落ちる理由なんかないだろ?

それにさ、向こうにいたら、その気になれば、数百年、数千年だってすぐ過ぎる。そしてその間、基本的には

「たいした代わり映えしない状況」

が、ずっと続くってことになる。そりゃそうだ。お前はお前なんだからな。

けど、こっちに来たらそうじゃない。1年って長いだろ?一生なんてもっと長いだろ?そしてその間、お前はもしかしたら、ものすごく変われるかもしれない。特にこんな地球ならなおさらだ。なんでってそりゃあ、こっちの世界なら、

「向こうにいたら絶対に出会えるはずがないほど、自分と違うひと」

にも、たくさん出会えるからな。しかも、表面だけで付き合うわけには行かねぇ。どうしたって、影響を与え合わずにはいられない。だからすごく変われるかもしれないんだ。

もちろん、それが「いい方向」とは限らないことなんて、みんな知ってるさ。でもな、考えてみろよ。自分が数百年数千年代わり映えしない生活にいるなか、かたやこっちに生まれ変わる連中は、10回100回何百回と、生まれ変わり死に変わって、いろんな経験を積んでる。変わらないのは自分だけだ。そんなのずっと見せられたら、どうしようもないだろ?だから俺たちは、いずれ必ず、自分から、生まれ変わるんだ。

それにな、こっちに生まれ変わると、さらにもっと素朴な、いいことがある。それは、

「自分が何者なのかを、忘れられる」

だ。しかも自分だけじゃない、周りのみんなからもだ。これって、最高だろ?

向こうにいたら、お前はお前だ。お前はお前が生まれてから今まで、どこで誰となにをしてきたのか、すべてを憶えている。そしてそれは、すべて記録されているし、いちいち細かいものを見てなくたって、その概略は、お前のエネルギーとして、周りに発散され、共有されている。けどこっちに来たら、そうじゃない。お前はお前がお前であることを忘れる。そして、なんで生まれてきたのか、そもそも自分で望んで生まれてきたことさえも、忘れることができる。だからこれはつまり、もっと信じられない力を得るってことでもある。それは

「文句を言える」

って力だ。向こうにいるとき、お前はなんでお前がこんななのか、誰にも文句は言えない。それは、お前がお前だからだ。それがすべてだ。それでも文句を言うなら、それはどう控えめに言っても、格好悪ぃ。そしてこっちと同じように、向こうにいるときのお前にも

「プライド」

ってもんがあるからさ、お前だってそんな格好悪いものになりたくない。「哀れな負の霊だ」なんて、思われたくないだろ?だから、文句なんて言えたもんじゃない。

でも、こっちではそうじゃねぇ。だって忘れてるんだからな。隠してるんでもない。本当に、忘れてるんだ。だからお前は、思いきり言うことができる。

なんで自分ばっかりこんな目に!

あいつが悪いんだ!

産んでくれって頼んだわけじゃない!

ぜんぶ、向こうじゃ言えるはずのない言葉なんだぜ?だからこんなの、向こうに帰ったらぜんぶ、「黒歴史」だ。でも、お前はそんなことさえも忘れてるから、堂々と言える。だからある意味では、みんな正しいからだの遣いかたをしてるとも言えるんだ。なんでこんなに文句言うヤツらが多いかって?そりゃあ、

「文句を言ってみたくて、生まれてきたから」

だろう?だからいいんだ。今のうちに言いたい文句は好きなだけ言っとけばいい。そんなのそのうち、また言えなくなるんだからな。

 

これが、お前の現実だ。そしてもちろん、俺だってそうだ。だから別に、俺がお前より偉いから、こんなことを言ってるんじゃない。ただ俺がお前よりその現実を直視してるから、こう言えるだけだ。そしてこれが、俺がお前より絶望して、お前より安定してる、その理由なんだ。

「自殺したらラクになれる」と思うから、自殺したいんだろ?けど残念だったな、自殺してもお前は死ねない。肉体は、お前の服だ。そして、世界中の服を燃やし尽くしても、お前が消えることはない。

「こんなはずじゃなかった」と思うから、苦しいんだろう?でもお前はいつだってお前だ。お前がお前じゃなかったことはない。そして現実はいつも、予測を軽々と超えてくる。

「こんな社会が悪いんだ」と思うから、苦しくて哀しいんだろ?でもそれなら、前世のお前は今よりしあわせだったか?1000年前のお前は、今より楽しかったか?そもそもお前は、いったいどこに生まれたかったんだ?今からでもウクライナに生まれ直してみるか?それとも、アメリカでなら、夢を追えるってのか?お前に100億あったら、自分をしあわせにできる自信が、ほんとにあるのかよ?

だからお前には、絶望が足りないんだ。絶望してるから、苦しいんじゃない。中途半端に絶望してるから、苦しいんだ。だから、もっと絶望しろ。もっと正しく、絶望しろ。そして、そのうえで、生きるしかない。それを覚悟するしか、生きる道はないんだ。

今のお前には、お前の目的を達するほどの、力がないんだ。だから、力をつけろ。お前は、たいした存在じゃない。魂の根底から望んだはずのことさえも、満足にできない。昨日感じた気持ちさえも、今日はもう思い出せない。たった数十年前の決意すら、維持できない。それがお前だ。そして俺も、まだ弱い。圧倒的に、弱すぎる。だから俺は、絶望してるんだ。

 

それにな、もしお前がこの世界の平均的な年齢だとしたら、俺はお前の倍くらい生きてることになる。でも安心しろ。俺が生まれたときから、既に世界はひどかった。だからこれは別に、お前のせいじゃない。霊の世界も、肉体世界もだ。だから、お前がおかしいんじゃない。俺も生まれたときから、ずっと絶望してる。

でもだからこそ、俺は力を蓄えてるんだ。ずっと、ずっとそうだ。そして俺の目的は、ずっと変わっていない。

「世界を誰よりも深く理解して、そしてもし、この世界がどうしようもないもので、誰もほんとにはしあわせになれない、そんな世界だと言う結論に達したら、そのときは俺の全力を以って、この世界ごと、俺を破壊する」

これが俺の目的だ。それにもちろん、俺は魂の墓場になんか堕ちたくない。どうせなら、そんな墓場ごと破壊してやる。すべて、すべてを、滅してやる。もしこの世界が、そんな世界ならな。

俺には、確信がない。わからないんだ。この世界の根底にあるのが、いったいなんなのかが。それは、ほんとに愛なのか?この世界に満ちているのは、いったいなんなんだ?すべては愛につながってるって、いったい誰が確かめたんだ?どうして、そう言い切れるようになったんだ?俺には、わからないんだ。

けど俺は、自分のことを「負の霊」だとも思ってない。そもそも、そんなものになりたいと思ったことはいちどもない。俺は誰かの邪魔をしたいわけじゃない。殺人狂でも、戦闘狂でもない。俺は、誰にも苦しんでほしくないと思っている。そしてもちろん、俺自身が、苦しみに満ちた世界なんかで生きていたくない。だから、俺を勧誘してくる負の霊団は、いつまでも勘違いをしてるんだ。

だから俺はただ、俺の想いを話してるだけだ。そしてここにも、俺の目的がある。もう少し柔らかく言うなら、「お願い」と言ってもいい。そして今回の本題は、実はここからだとも言えるんだ。

単刀直入に言う。もしお前の絶望を、お前が持て余してるなら、そしてそれで苦しんでるなら、それを俺にくれ。そしたら俺はその絶望を、力に換えられる。

絶望を無理に希望に換えるのではなく、絶望のなかで死ぬのでもなく、絶望を絶望そのものとして糧にする力

それが俺が俺として生きるために身につけた、身につけざるを得なかった能力だ。

だから、お前がその絶望を棄てたいなら、それを俺に渡せ。そしてさっきはこれを「お願い」と言ってはみたがこれはほんとには、対等なものだ。俺は、お前の下手に出る気はない。俺とお前は、対等な存在だ。俺はお前から絶望を受け取ることで、目的を達するための力を得る。そしてお前は、俺に絶望を渡すことで、少しはラクになる。だからこれは、お互いのためになり得るものだ。

けどもちろん、俺はお前に強制する気はない。というか、誰かになにかを強制する力なんか、誰にもない。たとえ最もつながりの深い存在でも、最も愛する存在でも、相手の行動を強制することは、誰にもできない。たとえ、俺が誰よりも相手のしあわせを、思っていたとしてもだ。だから、お前は自由だ。そして、これは「定期契約」でも、「永遠の契約」でもない。だからお前がお前の意志に基づいて、お前の渡したいものを、渡したいときに、俺に渡してくれたらいい。

そしてこれに力を与えるため、俺はこれに「絶喰」(ぜっく)という名をつける。つまりこれは、

「絶喰の盟約」

だ。だからお前は、俺に絶望を渡したくなったら、

絶喰の盟約に基づき、この絶望を、引き渡す

って言えばいい。そしてそのとき、俺のことを思い浮かべてくれりゃあいいってことだ。難しくねぇだろ?

それに実を言うと、この文章そのもののなかにも、そんな想いを仕掛けてある。だから苦しくなったら、何度もここに来て、これを読め。それだけで、お前の絶望は、俺に少なからず引き渡される。

 

けどこんなの、少しウマすぎる話だと思うかもしれねぇな?どう考えても俺は少しおかしそうだし、そんなことをしたら、「悪魔との契約」みたいに、いつか身ぐるみ剥がされるかもって思うかもしれねぇよな?でもな、安心しろよ。そもそも俺にそんな大それた力はない。この盟約にしろ、

いちど唱えただけでお前のすべての絶望が、一瞬で消える

なんてものじゃない。それにたとえすべての絶望が晴れても、また次の瞬間には、お前は新たな絶望の種を見つけるだろう。そういうもんだ。だから、俺をあんまり買いかぶるな。そして俺に、あんまり期待するな。

ただそれでも不安なら、この話の「ウラ」も、ぜんぶ教えておいてやる。っていうかもう話したとおりなんだけど、俺は場合によっては、この世界ごとすべてを破壊する。だからお前がこの盟約により渡した絶望は、いずれその目的のために活かされる可能性もある。それが、この話の「ウラ」だ。

だけどそのことで、お前が俺の行動の責任を取らされることはない。それに俺のこの計画は、俺を知るすべての存在に、俺自らが説明している。だから、守護霊に通報したって意味ねぇからな?そもそも、世界を破壊するってことは、すべてを知る存在をも破壊するってことだ。だからそもそも、隠し立てできるはずがないのさ。

それに大切なことは、俺はまだ、世界を破壊することを決めたわけじゃない。できるかどうか以前に、やるかどうかすら決めてはいないんだ。だって俺はまだ、結論を出してないんだからな。そしてもし、この世界でみんなが、お前がしあわせになれるなら、それでいいと思う。俺はほんとには、俺のこの計画が、いつまでも「計画」のままで在り続けることをどっかで願ってるんだ。

けど別に、俺は世界になにかを期待してるわけじゃない。そして、お前にも期待してるわけじゃない。だから、お前はお前の意志に基づいて生きろ。もし俺のこの目的を知ったうえで、そのために自分の絶望が活かされることを望まないなら、別に俺に渡さなくてもいい。それにもし、

お前の計画には賛同するけど、世界を破壊するなら、それが自分のやりたいことなら、それは自分でやる

って言うんなら、そうしたらいい。ただそれでも俺はお前なんかには期待してないから、俺は俺として、世界を破壊する。俺はお前の味方じゃないんだ。ただ、敵でもないけどな。

 

俺にお前を救う力はない。そして、俺もお前に救われるとは思っていない。ただそれでも、俺とお前の意志によって、助け合うことはできるかもしれない。あぁあとな、もしこれを読んでお前の具合が悪くなったら、それは俺のエネルギーにお前が当てられて、酔ってると思え。別に俺がお前に敵意を持ってるわけじゃないから、文句は言うなよ。逆にこれを読んで少しでもラクになったら、それは俺の狙いどおりだ。けど、感謝する必要はない。これは、お互い様だからなんだからな。

ってことで改めて、ここに絶喰の盟約が発せられたことを宣言する。でも忘れるな。これはあくまでも「プランB・バックアッププラン」だ。俺はお前たちが全員失敗したときに備えて、ずっと力を蓄えてるだけだ。だからブランAは、希望に満ちた計画は、お前が立てろ。そしてそれに邪魔なものは、ぜんぶ、俺によこせ。

 

さて、ずいぶん喋っちまったけど、そろそろ俺は寝る。お前も、ちゃんと休め。お前が休んだくらいで、世界は止まらねぇんだから。自分の無力を思い知れ。そしてだからこそ、力をつけろ。俺も、そうしてるだけなんだぜ?じゃあな。

コメント

  1. なすび より:

    予備校の英語の先生を思い出しました。

    その先生はむちゃくちゃ厳しくて、ネットで鬼と呼ばれているような先生でした。

    その先生は、何度も何度も”自分が大したことないことを徹底的に知りなさい。”とおっしゃっていました。

    授業は、生徒をあてて、質問をするという進め方でした。

    その質問も、普段から表層的な部分でなく、本質を考えていないと、答えられないようなものでした。質問自体はとてもシンプルなのですが。

    私もあてられたのですが、全然答えられなくて。。

    全然答えられない私に、先生は”もういい。”と静かに言いました。

    当時、高校2年生で、5年も英語を勉強しているのに、こんな基本的なことを答えられないのかと自分に絶望したのを覚えています。

    そして何より、それまで優等生として生きてきたので、とても恥ずかしかったですね。

    当時、勉強をしてもしても、成績が上がらなくて、苦しい思いをしていた私は、ついにとどめをさされました。

    でも、そこからでしたね。すべてがはじまったのは。

    私はこのとき”正しく絶望”したのだと思います。

    先生から優等生だと見られるかどうかよりも、しっかり本質を見た勉強をしようと開き直ることができました。

    そしてそこから、色んな物事の本質を見ようと決心して、精神世界との出会いにつながっています。

    その先生、プライベートではとても優しい方なんだと後に他の先生がおっしゃっていました。

    今でも忘れられない先生です。

    • Dilettante より:

      なすびさん、ようこそ、闇の向こう側へ。

      大切な想い出を共有してくださって、ありがとうございます。

      私自身は、そのようなやりかたをうまく活かせないほうではありますが、多くのひとには厳しすぎると思われることを覚悟したうえで、なおそのような導きかたによって、なすびさんや他のひとたちに大切なことを伝えることができたなら、素晴らしい先生だと思います。

      どうすればもっと伝えられるだろう?どうすればもっと理解し合えるだろう?

      というのは、私もいつも切実に考えていることですが、私も私なりのやりかたで、想いを伝え合っていきたいと、そう思っています。

  2. だれか より:

    ご親友が滅しようとする世界もその方の単なる服でしかないのでは。滅した世界の先に居心地のいい世界があるのなら彼には光も音もない真っ暗闇という服が与えられるのでしょう。自分の存在も同時に滅したいのなら自分は滅されたのだと思い込み思考を休止する自分になれるのでしょう。ただ他人から見れば永い眠りにつく成長の機会を放棄した哀れな霊に見える事でしょう。そうなると救い出すのが面倒になるので、他人に迷惑かける前に光に目を向ける勇気を持ちましょう。

    • Dilettante より:

      だれかさん、ようこそ、闇の向こう側へ。

      私と彼との関係を親友と呼ぶのにはかなりの語弊があるとは思いますし、なにより彼もそんなことは望んでいないと思いますが、ともかく彼は自暴自棄になっているわけではなく、考えることをやめようとしたこともないことは確かだと思います。

      そして彼は、彼の計画がどれだけ無謀なことであり、他者から見れば馬鹿げているという評価を下されてもしかたがないものであることは、重々理解しています。

      それに彼自身も言っているように、彼が彼の計画を完遂することは、本当には彼の意に沿わないばかりか、彼の意志の真逆だとすら言えると思います。

      ですから私としては、もしそれでもなお彼が立ち上がったときには、それを全力で止めようと思っていますし、もし私で止められないところにまで彼の絶望と哀しみが深まってしまったのなら、そのときはそれもそれで、ひとつの結果として受け止めようと思っています。

      それに実際には、私より強い存在など数え切れないほどいるわけですから、私が止められなかったとしても私の師を含め誰かが必ず彼を止めるでしょうし、逆に言えば私のことさえも倒せない程度では世界を無に還すなど到底無理であることは、誰に言われるまでもなくわかっているでしょう。

      ですからその意味においては、私は確かにある程度楽観的な見かたをしているわけですが、本当に重要なことは、彼が世界を破壊するかどうかではなく、

      彼が世界のなかで、どのように存在していくのか?

      ということだと思っています。

      しかし私に彼を救えるわけはなく、ましてや彼を導くことなどできるはずはないのですから、私はただ、彼の想いを受け止め、そして私の想いのわずかでも、彼にわかち合っていてほしいと、いつもそのように思っています。