「10月の彼女」に私がした提案。そしてそれを踏まえ、今の私が思うこと

私はずっと弱いからだで生きて来たので、暑いのも寒いのも苦手だ。だからその点で、春や秋の気候は私にとって好ましい。だから、本来10月というのは、私にとっていい月だと言ってもいいはずだと思う。

しかし実際には、私が10月という時節に抱く印象というのは、今まで長いこと、決して安らかなものではなかった。それは10月になると必ず、ある霊が私に刃を向けてくるからである。

そして私は今まで、その彼女のことを、

世のなかにはいろいろな存在がいる。その「他者」と触れ合い、体験を持ち寄り、共感したり力を合わせたり、お互いの「想像力」を高めて自己や世界をよ...
前回、私は毎年最も自分が強力になるときを見計らって私の前に現れ、そして根本的な決着はつかないまままた離れていくことを繰り返してきた、霊存在の...

の2度に亘って、ここにも書いてきた。今改めて読み返してみると、今までの文章のなかには、彼女が現れる時期が10月であるということは、明記していなかった。それはあなたにまでその10月を過剰に意識してほしくなかったという理由もあるが、そうは言ってもこの2回に亘る長い記録が残されたのは10月であると記録されているし、記録はできる限り記憶が鮮明なうちに残したほうがいいのだから、考えてみれば予測が立つものだったとも思う。

ともかく、私にとって10月とは、そういう月である。そして今年も、10月がやってきた。ということはもちろん、彼女も、またやってきたのだった。

 

ただここでいったん話を去年まで遡る。去年も彼女は、いつものように私のもとにやってきた。しかしそのときの様子は、それまでとはだいぶ違ったのだ。

というのも彼女は、私にまず使者を送ってきた。とはいえこれは、2015年のときとも同じだった。しかしそのうえで異なったのは、彼女が使者を通じて、

「宣戦布告」

をしてきたことだった。要するに、使者の彼は

無駄な闘いを避けるためにも、今この場で私たちの仲間になると決断しろ!

しかしそんなことを言われても、そんな要求を呑めるわけがない。だから私もそう言ったのだが、彼は

私は全面戦争を避けるため、そのために可能な限り話し合いによってお前を仲間に入れるため、いくらでも時間をかけて話し合ってくるように言われている

と言ってなかなか引き下がろうとしない。しかしそんなことを言われても、あなたにはわかってもらえると思うが、私は肉体人であって、彼に

「いくらでもかけられる時間」

などない。そんななかで、結局話し合いは数時間の後決裂し、相手もようやく諦めた。そしてその際に、彼は

じゃあ俺たちは、10日後にやってくるからな!

というように、初めて期日を指定してきた。正確を期すなら、これが10日だったかどうかはもう私は憶えていないのだが、だいたい7日から10日後だったことは間違いない。これが、彼女から提示された初めての

「宣戦布告」(事前通告)

だった。私はそれに対して、

なんでわざわざ、来る日を教えてくれるの?私に心の準備をさせてくれるようになったの?

と訊いてみたのだが、返ってきたのは、

10日後にはお前は死ぬ可能性があるのだから、せいぜい大切に過ごすようにとの慈愛だと思え。それに、10日後とは言ったが実際には7日後かもしれないし13日後かもしれない。だからそうやって、ずっと怯えてればいいんだ

というような返答だった。私は苦笑いするしかなかった。

 

それで結局は去年も決着がつくことはなく、私も殺されずに済んだわけだが、今年はそんな去年があっての今年だったということだ。そして毎年のこととは言え、詳細を書くことはやめるが去年はそのなかでも特にひどい目に遭った。だから今年もなおさら気を引き締めていた私に、去年同様突然、彼女の使者は私のもとにやってきたのだった。

やれやれ。今年も来たんだね。去年来た彼はどうしたの?

そんなことはお前に関係ない

私がかけたこの言葉は決して表面的なものではなかったのだが、そういう私の関心や気遣いといったものが、相手方に伝わる気配はまったくなかった。そして彼は、

この機会が与えられたことに感謝して、この場で降伏しろ!

と、私の予想どおりのことを、提案してきたのだった。

だから私は、

あのさ、そんなこといくら言われたって、私が頷くわけないのわかってるよね?

と、心を込めて言ってみたのだが、彼はさらに語気を強め、

お前は自分がどんな寛大でありがたい提案を受けているのか、まだわからないのか!?あのひとが、お前を仲間に迎え入れたいとずっと思ってくださっていることを、なぜ喜べないんだ!しかもお前なら、俺よりもずっと厚遇されるだろうにだ!いったいお前は、どんな立場でそんなことが言えるんだ!?

と言い返して来たのだった。私は、彼の琴線に触れてしまったらしかった。だから私も、内心緊張感や様々な想いを巡らせながらも、

そっか、あなたにとってはそういうことなんだもんね。でもやっぱり、無理なものは無理だよ。考えが違いすぎるもん。それにさ、やっぱり大事な結論は、彼女と話さなきゃダメだよ。だってあなたは、あなたの意志じゃなくて、彼女の意志に基づいて動いてるんだもんね

と言ってみた。すると彼は、私に対する嫌悪感は隠しきれないながらも、どこかしみじみとした様子で

そうだ。俺のすべては、あのひとのためにあるんだ

と、なんの衒いもなく言い切ったのだった。だから私はさらに、彼の気持ちを確かめたくなった。

じゃあもし、彼女があなたになんの役割も与えてくれなかったら?それどころかひと言もかけてくれずに、気に留めてもくれてないような様子だったら?それでもあなたは、彼女に付いていって尽くせるの?無視されてるとか、大事にされてないとか、道具にされたとか、蔑ろにされてるとか、思うことはない?

そう訊いた私に、彼の答えはなお早かった。

そんなことは決して思わない。俺があのひとからなにも言われないのなら、今はそのときではないということ。だから俺がすべきことは、いつでもいつまででも、そのときに備えて自らを律し高めることだけだ

凛とし決然とした彼の態度は、清々しいとしか言いようがないものだった。そしてそれは決して、

「洗脳・支配・無理……」

の結果だとは思えないものだった。だから私は、率直に感銘を受けたのだった。

その後もしばらく話は続いて、いくつかの紆余曲折もあったのだが、結局のところ彼は引き下がり、最後に

「再来の日」

を告げて帰っていった。

ちなみに私が

ところでもし私が、ここであなたを返さずに捕まえようとしたらどうする?

と言ってみたら、彼の答えはやはり簡明で

そのときは、俺も全力でお前を倒す

と言っていた。だから私は、彼を帰した。

これじゃあまるで、決闘みたいだな。というか、なんだかペリー来航みたいな話でもあるな

などというのが、率直な私の感想だった。

 

そしてその日、私はずっと彼女のエネルギーを感じ続け、こちらの最低限の態勢も整った段階でこれ以上引き伸ばしても意味がないと思い、彼女との話し合いに赴いた。私はあらゆる想いを込めて、

よくまぁ、毎年毎年律儀に来るもんだね

と心からのひと言を発した。すると彼女は、いつものように無表情のうえにわずかな笑みを浮かべた顔で、私にこう言ったのだった。

どう?元気にしてたの?

苦笑いより先に、言葉が突いて出ていた。

なんでそれをあなたが、そんなふうに訊けるの?いつもいつも延々とエネルギーを撒いてきてるくせに!まったく、なんて言ったらいいんだろうね!

そんなに大きな声を出さなくてもいいから。あなたと話をするために、用意した時間なんだからね

そういう彼女の表情に、変化はまったくなかった。

その場には、彼女の仲間が大勢出揃っていた。そのなかには、先日使者として来ていた彼の姿もあった。そんななかで、私はこれ以上彼女のペースに流されてはいけないと思い、結論を先に告げることにした。

もうこんなこと、やめにしよう?もうほんとに、終わりにしよう。もうこれ以上は、なんの意味もないよ

私は、さらに続けた。

もうわかってると思う。私とあなたとでは、決着はつかない。それは、互いの信念が、どうしても相容れないから。私はもう、認めるしかない。今の私では、あなたを説得できない。でも今のあなたでも、私は決して説得できない。それにあなたでは、私を殺すこともできない。それはもう、充分すぎるくらいわかりきったと思う。私はあなたの部下にはならないし、私はあなたを仲間にできない。だから、もうやめよう?諦めよう?そしてお互いに、それぞれの信じる道を行くことにしよう?

少しの静寂のあと、彼女は静かにこう言った。

じゃあ、私が年中活動してもいいってこと?

その答えは、私が予測していたものだった。だから私に、迷いはなかった。

うん。そうだよ。だってあなたは、もう負の霊じゃないもん。10年前は、もっとひどかったよ。5年前も、やっぱりひどく荒れてたよ。でもあなたは少しずつ少しずつ、変わった。確かに今のあなたは、昔のあなたとは違う。でもだからと言って、ひとを自殺に追い込もうとしてるわけでもないし、憎しみや苦しみを撒き散らしてるわけでもない。そうだよね?だったらあなたは、もう負の霊じゃない。ただ、私と違う信念を持ってるだけだ。それにあなたも、あなたの思うやりかたで、あなたが理想とするように、世界を変えたいんだよね?今よりも、いい世界にしたいんだよね?

彼女は、やはり独特の表情を浮かべたまま、こう言った。

そうよ。私は、このままの状況を看過できない。だから私が、すべての力を結集して、この世界を変える。私が、すべての力を、活かし切る

それは静かだが、力強いものだった。だから私の決意は、揺らぐことなくますます強まった。

うん、そうだよね。だから私とあなたは、本当はなにも対立してないんだ。ただ、信念と方法論に違いがあるだけなんだ。それに私は、あなたを潰そうとか殺そうなんて思ったことはない。あなたも本当は、そんなこと思ってないでしょう?だから、無意味なんだ。闘いは、必要ない。説得も降伏も要らない。ただお互いに、思う理想に向かって歩んでいけばいいだけなんだ。その結果は、後世に顕れるんだから

すると彼女は、少し笑みを強めて、私にこう言ってきた。

でもこの子たちのなかには、あなたに死んでほしがってる子もいるかもしれないよ?

だが私が返事に迷うことはなかった。

それはおかしな話だよ。だってあなたは、「それぞれがそれぞれの価値観で生きたらめちゃくちゃになるから、私が一手に統率する」っていう主義でいるわけでしょう?それなのに「私は殺したくないけど、私の部下はあなたを殺したがってるかもしれない」っていうなら、それはあなたの思う「統率」が、うまく機能してないってことじゃない!だからそれはあなたの問題で、私が考えることじゃないんだよ。もちろん、どんな理由のどこの誰であれ、私を殺そうとするひとには私が責任を持って対処するよ?でもそれは、本当は、私に言うべきことじゃないよ

彼女から返事がなかったので、私はさらに続けた。

そもそもさ、私とあなたがぶつかって、闘って、毎年毎年お互いに疲れきってさ、それで私とあなたの、どちらかのためになる?本当に喜ぶとしたら、それは「私とあなたのどちらか、あるいは両方に、死んでほしいと思ってるひと」だけでしょう!だったらなんで、そんなひとたちの思惑に嵌まる必要がある?私に死んでほしいと思ってるひとなんか山ほどいるよ!そしてあなたに死んでほしいと思ってるひとだって、山ほどいるでしょう?だったらそんなひとたちのなかには、私を殺すために、自分の力じゃ及ばないから、あなたの力を利用しようとしてるひとだっているかもしれないよ?それにもしかしたらその逆に、あなたを殺すのに自分の力じゃ足りないから私の力を利用しようとしてるひとたちが、自分の意図を隠しながら、「あなたの部下になったふり」をしてることだって、あり得ることだと思わない?だったらそんなことこそが、あなたが潰すべき可能性だよ。信念が違うだけの私にこんなふうに突っかかって来るなんて、明らかに優先順位の付け間違いだよ!そう思わない?

 

もしかしたら私をずっと無視するつもりなのかと思うほど長い沈黙のあと、彼女は口を開いた。

でも私を止められるとしたら、あなただけだよ

そんなことはないよ。私より強いひとなんかいっぱいいる。だからいざとなったら、あなたを止めようとするひとは、たくさんいるよ

そう言う私に、彼女は今度は間を置くこともなくこう言った。

いや、そんなことは問題じゃない。私よりあまりにも強い存在は、私のことを気に留めていない。あなただけが、私の脅威を正しく認識して、それに対処しようとしてきた。それに強いひとには、それ相応の強い相手が動くもの。だから私を本当の意味で止められるのは、あなたしかいないのよ

そんなものなのかな。でももしも、あなたより強い存在があなたを軽んじたりして、結果的にあなたの想いが通るなら、それはそれで世界の結果だよ。ただ本当に大事なことは、そこでさえない。「あなたの想いが通るかどうか、その確率はどのくらいあるか」なんてことは、ほんとはたいしたことでもない。それよりもずっとずっと大事なのは、「もしあなたの想いが通ったとしたら、そこではどんなことが起きるか?」ってことだと、あなたに対しても、いつも思ってるよ

私は、自分でも意外なほど穏やかな気持ちで、彼女に伝えた。

もし私が今のあなたの仲間に、もっと正しく言えばあなたの「指揮下」に入ったとするよね。そしたらあなたは、私のこともぜんぶ考えなきゃいけなくなる。だって「個人それぞれの意志は主張させず、私が全員を統率し、指揮する!」っていうのが、あなたの信念なんだからね。でも私の活用法を考えるのって、あなたには荷が重すぎると思うよ?私自身でも手に余る私のことを、あなたがひとりで扱えると思う?しかもあなたは、そのうえで私以外のすべてのひとのことを考えなきゃいけない。仮にあなたの理想が叶ったとしたら、すべての宇宙のすべての存在、数千兆でもそれ以上でも利かない、それこそ無量大数としか言いようがないくらいの数のひとたちのことを、ぜんぶ一手に引き受けて、考えなきゃいけない。あなたが目指してるのは、目指そうとしてるのは、そういうことなんだよ?でもそれでもそうなりたいと言うなら、目指せばいいと思う。私じゃ説得できないってわかったし。だから別にいいんだけどさ、でもやっぱりひとつだけ、思うんだよ。そうなったときのあなたは、数えきれないほどのあらゆる存在の活かしかたを、自分だけで考えなきゃいけなくなったあなたは、いつあなた自身のことを考えるの?そんな時間を、どうやって生み出すの?

答えは、返ってこなかった。でも私はどうしても、訊いてみたかった。

私だって、いつも考えてるよ。私と関わったすべてのひとのことを、順番にってわけでもないけど、毎秒毎秒ってわけでもないけど、それでもいつも考えてるよ。今はもう関わることさえできなくなったひとたちのことも、そうだよ。だけどそれでも、私の場合は、すべて私だけで考えてるわけじゃない。それに、みんなそれぞれが、それぞれにできる範囲で、なにかを自分で考えてることを知ってる。そして、それでいいと思ってる。だけどあなたの「理想」は、言っていることは、そうじゃないでしょう?あなたはすべてのひとのすべてのことを、自分だけで考えようとしてる。そして、それが唯一最善の道だと思って、それを実現しようとしてる。でももしそれが思い通りに叶ったとして、いつあなたはあなた自身のことを考えるの?私でさえ時間もエネルギーも足りないと思ってるのに、あなたが思ってるとおりになったら、そのときあなたはいったい、どうやってあなたの時間を、生み出そうと思ってるの?

 

長い時間のあと、彼女から返ってきた答えは、答えではなかった。

でもあなたも、間違ってる。だから私は、最初に「元気にしてたの?」って、あなたに訊いたのよ。あなたも、ぜんぜん元気じゃないでしょう?そんなの、間違ってるのよ

そうだろうね。でもだからって、あなたが私より私をうまく扱えるとは、とても思えない。そんなひともいるかもしれないけど、少なくともそれがあなたじゃないことは、確信を持ってわかってる。だから、あなたでは、私を説得できないんだよ。そして私も、あなたを説得できない。だから、お互いにそれぞれの夢と理想に向かって、歩んでいこうよ

彼女は、なにも言わなかった。そこにいる彼女の部下の誰ひとり、なにも言わなかった。それはそうだ。彼女がなにも言わないのに、彼女の指揮下にいるひとたちが、なにかを独断で言うことなど、あるはずがない。

 

それを踏まえ、私はもういちど改めて、私からの提案をまとめて明示した。

でも私は、ここであなたと私の意見を一致させることを目指してるんじゃない。私はただ、こう提案したいだけ。「私たちはお互いに、過度に干渉したり、闘ったりしない」ってことを。わかってると思うけど、私からあなたに闘いを挑んだり、進んで刃を向けたことは一度もない。だから私は、この合意をこれからも当然守れると言い切れる。だからあとはあなたとあなたたちの問題なんだ。でもね、私は「約束は破られることもある」っていうことを、よく知ってる。どんなに大切な、切実な約束であってもね。状況は、気持ちは、常に変わる可能性があるから。だから私は、たとえいちどこの約束が結ばれたとしても、それをあなたたちが破ることがあるということも承知したうえで提案する。そしてもちろん、いついかなるときであれ、他の誰からの場合と同じように、あなたたちから攻撃を受けた場合は、当然正当防衛として応戦する。こういう協定を、結びたいと思うんだ

しかし、返事はなかった。だから私は、さらにこう伝えた。

わかった。あなたが合意してくれないとしても、それでも私は私として、私たちに関わるすべての存在を証人として、この私の気持ちを、あなたたちに伝える。それにたとえあなたたちに合意してもらえなくても、たとえ合意されたふりをしたうえで反故にされても、それでもこの気持ちをはっきりとあなたたちに伝えたということに、大きな意味があると思うんだ。それにね、あなたはやっぱり、私とは違う信念を持っているけど、昔とは変わってしまったけど、それでもすごいよ。あなたには、あなたを信じ敬うたくさんのひとたちがいる。それは、すごいことだと思うよ。だからこそ、もうほんとに嫌なんだ。あなたとむやみに闘うのは。だってもし今回もまた闘ったら、きっと私もボロボロになって、あなたも弱りに弱って、眠りに落ちるでしょう?そしたら私は、またあなたの部下たちから、「私の大好きなあのひとを、あいつがこんなに弱らせた!ほんとはもっと、いつだって、一緒にいたいのに!」なんて思われるんだ。言葉にしようがしまいが、そうやって責められるんだ。そんなのは、もう嫌だよ。私は、いちども望んでなかったよ。だから、もうこんなやりかたは、終わりにしよう。それに私はあなたと違って毎日生きてるから、からだを維持しなきゃいけないから、ご飯を食べたいんだ。だからあなたが私に斬りかかってこないでくれるなら、考える時間はどれだけかけてもいいから、私の気持ちは言ったとおりだから、もう帰るね

 

こうして私は、無事に帰ってきた。お互いに負傷者がゼロという、過去最高の結果を得ることができた。剣を打ち合わせることさえもなかった。本当に、よかった。これが、今年の彼女との、顛末だった。本当はもう少し細かいやり取りがあったのだが、かかった時間が2時間ほどだったのも、過去最短記録を大幅に更新するものだった。

もちろん、これですべてが終わったわけではない。むしろ彼女は、今までとは違い、これからはさらに精力的に活動することになるだろう。それが引き起こす影響は、到底計算し尽くせない。しかしそれでも、今まで長年に亘りできなかったことを、今回はできた。そして私は、それをいいことだと思っているし、それはきっと間違っていない。憎んでもいないひとを、斬らずに済んだ。憎んでもいないひとに、斬られずに済んだ。言いたくもないことを、言わずに済んだ。この実績は、とても重要なものだ。だからあなたにも、このことをよく噛みしめてほしいと思う。妥協することなく、抑圧することなく、互いの意志を尊重し、互いの色と音を活かす。こんな調和的な世界を創ることが、私の願いだから。それがきっと実現できるということを、私はずっと、信じていたいと思う。